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接客とは何なのか? 接客の本質、プロが備えるべき技術など

接客業でのクレーム対応術 ~プロが教える6つのポイント~

かつてはお客さまの欲しいものを丁寧に提供することが「接客」でしたが、欲しいものは何でもネットで買える今、わざわざ対面で買う意義とは何かを考えなければならず、「接客」に求められるレベルはより高度なものになっています。
商品知識はもちろん、コミュニケーション力、人間力……接客にはあらゆる要素が必要ですが、昔ほどロールモデルがいないため、学ぶ機会も教育できる人材も不足している企業が多いようです。接客の質は、企業イメージやブランドイメージを左右し、また商品にプラスアルファの付加価値を付けます。長年、百貨店で一流のおもてなしをしてきた接客のプロの視点で解説します。

今回、接客についての解説をするのは……

株式会社三越伊勢丹ヒューマン・ソリューションズ
接客研修担当者

「接客は一様にマニュアル化できないもの。自分流にカスタマイズして体得して行くしかありません。」

接客とは

接客とは、お客さまをおもてなしすること。身だしなみや言葉遣い、立ち居振る舞いなど、基本となる部分はマニュアルとしてルール化することができますが、お客さま一人ひとり、好みも状況も違うので、そこから後はシミュレーションやロールプレイングを重ねて「お客さまの側に立った接客」を体得していくしかありません。

今はネットで買い物をするのが当たり前の時代です。百貨店に入社した新入社員でさえも百貨店で接客を受けたことがないというケースもあり、ニーズチェックの概念を知らないこともあります(ニーズチェックとは、例えばトレンチコートを見ていたお客さまとの会話の中から、そのトレンチコートが気になった理由として、薄手の上着を探していたなどのニーズを聞き出し、お客さまに提案する商品につなげることです)。
アパレルの優秀な販売員は、ニーズチェックはもちろん、顧客のワードローブも把握しています。ですから、「今年こちらの商品をお買い上げになったら、お手持ちのあのパンツと合わせられますよ」とご提案ができます。お客さまもそのような接客が受けられることを期待して、担当の販売員のシフトまで確認してからご来店されることもあります。

もしも、置いてある商品を説明して売るだけなら、販売員はいりません。よく話題になる「お客さまへのお声がけは必要か否か」という問題も、そもそも、お声がけして欲しい方なのか、して欲しくない方なのか、よく観察していればわかる話であると言えるでしょう。全員にルール的に声かけするのは「接客」ではありません。観察する際にどこを見るのか、そのポイントを当社の接客教育では教えるようにしています。

「接客」はロジカルシンキングを学ぶのとは異なり体得していくスキルなので、トップ販売員のノウハウを知ったからといって、誰もがすぐにトップ販売員になれるものではありません。接客教育というのは非常に難しいものです。

巷にはリアル店舗ならではの強みを活かしきれてないケースも多く、そのような店舗の方からご相談を受けることは少なくありません。接客研修のご依頼いただいた際には、時間をかけてご要望をヒアリングします。各企業様に合った研修内容にしないと生きた研修にならないので、実践につながりません。教えた「接客」が生きるようにカスタマイズし、演習をしながら「接客」のスキルとマインドを体得してもらうように組み立てています。

三越伊勢丹が考える「接客の本質」

三越伊勢丹ヒューマン・ソリューションズの母体は百貨店です。結婚や出産、冠婚葬祭など人生の節目を彩るアイテムを揃えた「百貨のセレクトショップ」として、お客さまがそのアイテムを通して達成したいことをお伺いします。またご希望の商品を提供するだけにとどまらず、例えばホームパーティー用のお皿を買いに来たお客さまには「ちょうど地下でワインフェアもやっています」などプラスワンの情報をお伝えし、館全体でおもてなしをする「期待を超えるサービス」をモットーとしています。

日本橋の三越では、コンシェルジュを置いて「つなぐ」という接客を心掛けています。もしお客さまの欲しい商品のサイズがなかったらお調べし、他店舗にあればそこに電話をしてお取り置きをして、担当の方のお名前を聞いてお渡しするまでを「接客」としています。

当社では接客教育だけでなく、労働力提供も行っているので、その中にはさまざまなご依頼があります。例えば、高級車を扱うディベロッパーから、お客さまから「高級車だけじゃなくてジェット機も用意できるのか」と言われた時にどうしたらいいのかと相談を受けるようなこともあるのです。車しか売ってこなかった営業マンにはジェット機は用意できませんが、私たち百貨店の接客をしてきた人間には、お客さまに合ったものをコンサルティングしながら、ジェット機も、それ以外も、色々とご提案ができるんです。お客さまのご要望に対し「ありません」で終わらせないのが百貨店の接客です。最近では、この百貨店のような「コンサル的な接客」を自社に取り入れたいという企業の声も増えています。

大切にしたい「接客の心得」とは

近い未来、お客さまは百貨店に来ても商品を買わず、その場でタブレット決済して商品は自宅に届くようになるという可能性もあります。だからこそ「家で、一人で、タブレット決済で買い物をするよりも豊かな未来が得られる」「あなたと時間を共有したい」と足を運んでもらえるような、接客をして行くことが重要になります。お客さまの貴重な時間をいただくことに付加価値をつけていくためには、マインドやビジョンの共有が欠かせないと思っています。それでは、当社で大切にしている「接客の心得」を3つ、参考にお伝えしていきましょう。

一人ひとりのお客さまに合わせる

まずは一人ひとりのお客さまに合わせることです。表情ひとつとっても、ただ笑顔でいるのではなく、目の前のお客さまに心地よく過ごしてもらうためにはどうすべきなのか、よく観察してそれを考えることが大事です。ただお客さまを褒めているだけでは実現できません。その人がどのようなタイプで、何を喜んでくれるのか、よく観察し心を配って接することです。マニュアルで「○○しなきゃ」と思うのではなく「このようなことしたら喜んでもらえるだろう」というマインドに変えていく、目の前の人を喜ばせたいというホスピタリティです。

最低限の接客レベルを習得したら、あとはどれだけ目の前のお客さまに寄り添えるか、その人の心地よさを想像できるかが重要になります。若いスタッフが「お客さまにウソはつきたくない」と、初めてのお客さまにも似合うものと似合わないものをはっきり言ってしまい、お客さまに不快感を与えてしまうような事例もあります。「似合わないものは勧めたくない」という気持ちは分かりますが、それがそのお客さまが望まれた接客なのかという「お客さま目線」が欠けていては「接客」とは言えません。自分とお客さまは違うという認識を持ち、一人ひとりのお客さまに合わせるカスタムメイドの接客を目指します。

お客さまと一緒の時間を楽しむ

昨今では、一緒に楽しんでくれる人を求めるお客さまも増えています。商品を売るのではなく、一緒に選んでもらえるような接客を求められる場面は少なくありません。「お客さまは神様です」と媚びるのではなく、お互いに楽しい時間を過ごせる相手としての対応が必要です。その場では、お客さまと過ごす時間を豊かで楽しい、実りの多い時間にすることが「接客」となります。より良い未来のためにご提案をしていくことが顧客満足になる、今の時代にはマニュアルではなく、本音で接していてくれているような接客が「この人は信頼できる」という安心感につながり、「この人だからこの時間を共有できた」という顧客満足や購買につながっていきます。

接客のクオリティを一定に保つ

「接客」は体得していくスキルなので、個々人の資質や経験、モチベーションによってレベルがさまざまです。企業側がいくら「百貨店の接客、ホテルの接客を目指している」と言っても「行ったことないからわからない」と言われたり、各々のイメージする「百貨店、ホテルの接客」が異なっていたりします。しかし、店頭に立つ以上はその人の接客がお店の「顔」です。言葉遣い、身だしなみ、所作など、ベーシックな部分をルールとして揃えておくのはもちろん、さらに、「うちの接客はこうあるべき」というビジョンや行動指針を共有し、接客のクオリティを揃えていくことが重要です。接客のクオリティが、企業イメージ、ブランド力を作っていきます。また、ビジョンや行動指針をしっかりと定めておけば、店舗のリーダーや指導者が違っても、接客を同じグレードに持って行くこともできます。

接客のプロが備えるべき技術

「現場を見てうちの弱いところを教えてください」というご依頼を受けることがありますが、どの店舗も大抵、身だしなみや店舗の清潔感などは問題ありません。お出迎えとお見送り、人と人とのコミュニケーションの部分が弱いケースが多いです。「接客」とはお客さまの貴重なお時間をいただく、コミュニケーションです。当社では、下記の3つを接客に必須のスキルとして、これを体得してもらえるように接客研修を組み立てています。

観察力

第一に鍛えるべきスキルで、すべての「接客」の基本はここから始まります。年齢・服装などの外見的特徴からどんな人なのかを想像し、動きや状況に注目します。歩くスピードはゆっくりか、早足か。時計を見ていれば急いでいるかも、と推測します。さらに、手に取った商品のどこに興味を持っているか、色なのか、デザインなのか。それらの情報から、そのお客さまの気持ちを想像・推察して、それからそのお客さまに「声かけ」するかどうか、そのタイミングも含めて判断します。接客研修では観察で見るべきポイントについて、豊富な事例をもとにお伝えしています。

共感力、質問力

2つ目は共感力、質問力です。AIには雑談ができません。雑談からニーズを掘り起こすのは販売員にしかできないことです。しかし、最近の若い人の中には「知らないこと、興味がないことに対しては共感できない」「共感の仕方が分からない」と感じる人が増えています。そのような人にとっては、共感することは非常に難しいことなのです。「上野で宝くじを買ったら100万円当たったんだよ」いう相手に対して「上野ですか!」と共感を示したらおかしいでしょ? という笑い話が現実になってきているのです。

かつては「家族でハワイに行くんです」とお客さまが言えば、「ハワイいいですよね〜」と返すことに疑問を感じるというスタッフはまずいませんでした。しかし、最近の若いスタッフは「ハワイを知らない」「言ってる言葉が分からないから共感できない」と感じているケースも珍しくないのです。「ハワイをいいと思わないのにいいですねと言いたくない」「嘘をついているみたいでつらい」と言う若いスタッフもいます。

このような状況では共感することにもテクニックが必要になります。接客研修では、一例としてお客さまの言葉だけを使って共感する「ご家族で行かれるんですね」と返すなどの手法を教えています。それができるようになったら、段階的にステップアップして、お客さまの言葉を要約したり、一つ言葉を足したりする手法に発展させます。できるだけ嘘をつかずに、齟齬をなく共感していく方法を一緒に考えようというスタンスで進めることで誰もが実行できるようになります。

提案力

お客さまのより良い未来のために提案する、商品に付加価値をつけるのが提案力です。例えば「帰省用の手土産を買いに来た」というお客さまには「今日はお車ですか?電車ですか?」と聞いて、電車だったらかさばる物や重い物はおすすめしないなどです。「クルーズに行くから」とお洋服を買いに来たお客さまには、ご飯のたびに着替えなきゃいけないことを踏まえたコーディネートの提案が必要になりますし、お芝居を観に行くという方には、マチネかソワレかでも提案すべき服装はことなります。ドレスコードなどの知識を持った上で、使うシーンを想定した提案が求められます。

以前、会社主催のパーティーでワインを探しにきたお客さまがご来店され、どんなものをお探しかを聞いたところ「実は、酒好きだよねというだけでワインを買いに行かされたのですが、本来自分は日本酒党で、ワインのことは何もわからないんです」とのこと。それでしたらと、イタリアンにも合う日本酒をお勧めしたところ、パーティーでは非常に喜ばれたそうです。お客さまにいただいた情報でどれだけご提案できるか。質問力と情報を整理して提案する力、販売員の腕の見せどころであり、今求められているスキルでもあります。

ワンランク上の接客を実現するために

「接客」は体得していくスキルなので、いきなり誰もがトップ販売員になれるわけではありません。接客研修では、できる人の技術をスキル分解して、階段状にして、一歩一歩登って行くとトップ販売員になれるよという方法をお伝えしています。その階段を作るための蓄積されたノウハウがあり、常にアップデートもしています。

武道などでよく「守破離」といいますが、まずは型を教えて、そこから自分なりのアレンジをしていってもらいます。型も分解して教えます。まず「表情」を教えて、次に「動き」。表情と動きをセットでやってみて、ダメだったらまた「表情」からやり直し、と何度も反復して体得してもらいます。3つ目が「言葉遣い」です。

その後、声かけの仕方や、相手に心地よい立ち位置、お客さまとの適切な距離感を探っていきます。これは「30cm離れましょう」と教えるだけでは伝わらないためです。昔は業界の慣習で、先輩の背中を見て覚える、ということが多かったのですが、今は人が少ないのでロールモデルがないと言います。ロールプレイングでお客さまの立場も体感してもらい、距離感、立ち位置についても実感しながら進めていきます。

言葉で伝えるだけでなく、実際にお客さま役をやってもらい、お客さまの気持ちを体感してもらうことを大切にしています。疑問が出れば、ロールプレイングで試してみて、何を心地よいと感じるか確認したり、参加者で多数決を採ってみたりするなど、どのような人にも腹落ちしてもらえる工夫を研修ではしています。接客研修で学んだことを実践したという方からは、最初にお客さまを迎える「アプローチ」で入店客数が2倍になった、セット率が上がった、お客さまに名前を覚えてもらったなどのご感想をいただいています。型を覚え、マインドを学び、日々「お客さまの立場に立った接客」を心がけて行く、その積み重ねがワンランク上の接客の実現につながるのです。

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