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コロナ禍の店頭コミュニケーション
~接客コミュニケーション~

先月から2回にわたり「コロナ禍の店頭コミュニケーション」をテーマに連載しています。先月は「オペレーション力」今月は「接客コミュニケ―ション」にフォーカスします。先月のブログと併せてお読みいただけますと店頭コミュニケーション力強化に役立ちますので、ご一読いただけますと幸いです。

コミュニケーション量の制御と豊かな会話

言わずもがなコロナ禍での接客 は、飛沫感染、接触感染防止に心を砕きながら、お客さまに寄り添い、商品・サービスの販売を行わなくてはいけません。国の濃厚接触者判断基準は、「マスクなど必要な感染予防策をせずに、手で触れること、また対面で互いに手を伸ばしたら届く距離(1m以内)で、15分以上の接触があった場合」としています。とはいえ、店内の面積、什器レイアウト事情、離れすぎると接客にならないことなどもあり、ソーシャル・ディスタンスの遵守は難しいのが現状です。 また15分経ったからといって接客を切り上げるというわけにもいきません。 そこで、販売員の皆さま自身の安心・安全にも役立つよう「接客会話量は制御しながら、お客さまにとって豊かな情報のやり取り」となる方法について2点提案したいと思います。

1.接客コミュニケーションのスタート
「アプローチ・トーク」

少し前までは、お客さまとのコミュニケーションを活発化させるために、お迎え/来店のお礼を表す挨拶のあとのアプローチ・トークは”雑談力”が必要と言われてきました。しかし、 これからの接客販売においてのアプローチ・トークはさりげない短い言葉でお客さまの興味を引いたり、お客さまからYESをもらえるトーク、スムーズに接客販売の本筋に移行できるトークがより一層大切になってきます。アプローチ・トークは6種類あります。

(1)感性アプローチ
「優しい丸みのデザインでございますよね」など商品の印象を表現します。

(2)質問アプローチ
「苺はお好きですか?」など的確な質問や仮説を投げかけます。質問アプローチでは、答えやすいクローズド・クエスチョン(YES,NOで答えられるもの)がおすすめです。

(3)サービス・アプローチ
「(什器内の商品をじっとご覧になっている)商品をお出しいたしましょうか?」など遠慮を取り除いたり、お手伝いを申し出ます。

(4)説明アプローチ
「こちらは抗菌防臭加工の靴下でございます」など商品の特徴の説明や案内をします。長い説明はアプローチとは言えませんので 、短いことが肝要です。

(5)挨拶アプローチ
「こんにちは、先日はお買い上げ有難うございました」など固定客、顔見知りのお客さまへお礼と挨拶をします。最近では、新規のお客さまにお天気の話をする挨拶アプローチも出ています。たとえば大雨の日、「足元の悪い中ご来店いただきまして有難うございます」というアプローチ。アプローチ自体はお客さまを慮る良いトークですが、その日、立ち寄った施設内のどのお店でも同じようなアプローチになると、お客さまも嫌気がさしてきますので、他のアプローチトークを行うことが賢明です。

(6)お褒めアプローチ
「素敵なバッグをお選びでございますね」など、率直な気持ちを伝えます。
私が新人の頃は「素敵なバッグでございますね」というお褒めアプローチでも良かったのですが、今は、お客さまのセンスや価値観に関心を寄せることができないといけません。このお褒めアプローチは、アプローチの中でも難易度が高く、販売員の皆さまの観察力の高さが求められますし、視覚情報をダイレクトに、しかも表面的なお世辞に聞こえないように言語的表現にするのはさらに難しいです。容易にするためには訓練が必要ですが、やり方はお客さま情報をプラスで受け止めることです。
例えば、お客さまのお召し物が、クラシカルな小花柄で、全身茶系で統一されているとします。この時、「地味だなぁ」と受け止めてしまうと、アプローチ・トークに変換することができなくなってしまいます。「シックなカラーがお好きなのかな?」「シックで落ち着いた印象」とプラスに受け止められると、そのまま質問アプローチやお褒めアプローチに変換しやすくなります。普段から視覚情報をプラスの言葉で受け止めることができるように訓練したり、置き換え法といって、マイナスの言葉(地味)をプラスの言葉(シック)に変換する訓練をすると言語的表現が向上します。

このように、6種類のアプローチ・トークを使いこなし、接客前半のコミュニケーションを短く有効なものにしましょう。

2.接客販売の本筋、
お客さまに寄り添うコミュニケーション
「傾聴力」

既に多くの方は「傾聴力」の重要性をご存じだと思います。他者に向かい合う時、マネジメント力を発揮する時、習得すべきスキルとして多くの人の関心を集めています。その傾聴の技術を接客販売に取り入れて、短時間で、会話の質を高める方法 について紹介します。

(1)同意
お客さまは賛成してもらえると嬉しく、心強くなります。
 (例)お客さまの目を見て「おっしゃる通りです」

(2)オウム返し
会話に含まれるキーワードを繰り返します。長く接客販売の教育に携わっていますと、オウム返しを共感と勘違いしている方が多いことに驚きます。またお客さまの話のあと、全てにオウム返しをして、接客が先に進まず、時間がかかっている人、漫然とした接客になっている人がいます。オウム返しは、キーワードのみを繰り返し、お客さまの話を間違いなく聴いていることの確認になっていることが大切です。
 (例)「週末奥多摩に行ってきました」→「奥多摩ですか」「アウトドアですか?」

(3)展開
話を先に進めます。会話を促し、先に進めることが接客販売には欠かせません。
 (例)「それから」「どのようにされたいですか?」「たとえば?」

(4)共感
お客さまと共にいる状態を築きます。人は感情で動きます。人を分かろうとする感情が共感であり、共感があると人は心を開き、話し、動いてくれるようになります。
 (例)「大変でしたね」「~と感じていらっしゃるんですね」

(5)感動
お客さまの話に深く感じて反応します。お客さまだけでなく、皆さん自身も自分の心の動きに温度を感じると思います。
 (例)「気持ちが高鳴ります」「嬉しいです」

(6)まとめ/要約
要点をおさえて確認します。接客中、お客さまは様々な要望を話されます。会話を整理し、曖昧な状態のそれらを明確にし、確認することが必要です。
 (例)「お酒が弱い方でも飲みやすい軽い味わいのシャンパンをお探しですね」


お客さまは自分の話を十分に聴いてもらいたいと思っています。同時に「この人は聴いてくれる人かどうか」不安も持っています。紹介したこれら6種類の技法には、お客さまの不安を払しょくし「お客さまの話したいことをお話しください」というメッセージが込められているので、十分にニーズを引き出す ことができるのです。さらにこの技法を意識することで、語い力が豊富になり、会話が歴然と変わってきます。

Nishimiyaのひとこと


「短い時間で、丁寧にお客さまの心の中にあるものを引き出し、寄り添うことができるように、先ずはこれらの技法を試してみてください。」

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